実習

人体解剖学実習は3日目が終わった。
次第に慣れてきたのだが、ご遺体の顔を静止しながら解剖することはまだ出来なかった。姿勢の関係で顔が近くに来ると「どうしても違和感を覚えてしまうなぁ」―そんなことを思いながら、ふと、実習台のすぐ脇にあるイスに目を向けた。そのイスは金属製のイスなのだが、そこに白衣を着てマスクをつけ帽子を被った自分を見つけた。もしもご遺体が自分を見ているとしたら(←いやいや、もちろんそんなことはないけど。)、イスに映ったこの顔が見えているわけだ。その顔はなんだか凛々しさに欠けていた。やはり、もっと全力で実習に向かわなければならない。そう思った。

頸神経ソウの剖出を行った。頸横神経は見つかったが、大耳介神経や小後頭神経が脂肪に埋もれてなかなか見づらい。でも、両手に握ったピンセットを操り、時には筋肉がプルプルと震えてしまうくらいに力を出し続けながら20分以上ひたすら組織を取り除いてようやく耳の方向へ走る大耳介神経を発見できた。

解剖の技術、俺は不器用だけれども、ちょっとばかりはアップしたのかなぁと思えた出来事だった。いつのまにか、ご遺体の顔が近づいていても抵抗はなくなっていた。
また一つ俺は目に見えない何かを身につけたようだ。

さぁ、明日も頑張ろう。
とりあえず腰が痛いから湿布を貼って寝よう(笑)