慰霊祭
解剖実習の締めくくりとして、慰霊祭が行われた。
遺族の方々と故人の数年ぶりの再会。非科学的な話にはなるが、御霊と書かれた碑の周りには故人の霊やら魂やらが集まっているのかなと、式典の最中にふと思った。
そこには俺がお世話になった2人の方も当然いるのであろうが、自分たち医学生をどのような顔で眺めているのだろう?いわゆる「見える人」ならお顔を拝見できるかもしれないが、自分にそのような能力はあるはずもなく、ただ自問自答するだけであった。
「果たして俺はこれでよかったのか」と問いかけるのみ。
しかし、やはり本当に感謝の思いでいっぱいである。
特に、心臓の構造をひたすら目と手で覚えた実習は一生忘れないであろう。
故人の死を、俺はどう生かすべきか。
恐れ多き問題だ。
そして自分は自らそういう世界に足を踏み込んだ。
頑張らなくてはいけない。頑張る義務がある。